YUMIKO CHIBA ASSOSIATES

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個展『鷹野隆大 毎日写真1999-2021』

【2021年7月24日更新】

鷹野隆大の個展『毎日写真1999―2021』が国立国際美術館にて2021年6月29日(火)~9月23日(木・祝) 開催されています。


ⓒRyudai Takano, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

個展 『鷹野隆大 毎日写真1999-2021』
会期: 2021年6月29日(火) - 9月23日(木・祝)
国立国際美術館(大阪)

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国立国際美術館(大阪)にて、鷹野隆大の美術館における初の大規模な個展となる「鷹野隆大 毎日写真1999-2021」を開催いたします。

鷹野隆大は、女か男か、ホモセクシャルかヘテロセクシャルか、といった人間の性にまつわる二項対立の狭間にある曖昧なものを可視化することを試みた作品集『IN MY ROOM』(2005年刊行)で木村伊兵衛写真賞を受賞し、ジェンダーやセクシャリティをテーマとする写真家として、これまで一般に認知されてきました。

しかし一方で、1998年から毎日欠かさず写真を撮ることで、視覚表象における価値のヒエラルキーを問い、制度化された眼差しや写真という媒体の特性とその限界について、考察を重ねてきました。鷹野はそのプロジェクトを「毎日写真」とし、今日も日々実践し続けています。

本展覧会では、鷹野の作家活動の核とも言えるこの「毎日写真」を主軸としなから、ジェンダーに取り組んだ出世作や、極めて身近でありながら顧みられることのない日本特有の都市空間を写した「カスババ」、定点観測的な「東京タワー」、また近年力を注いでいる影の作品など、2000年以降の作品を中心に最新作を含めて約130点を展示します。

是非、ご高覧ください。

*関連イベント*
対談「立体と平面の間」
2021年8月8日(日)
14:00~
B1階講堂
開催日時:2021年8月8日(日)14:00~
講師:金氏徹平(美術家)× 鷹野隆大
定員:先着50名(要事前予約)
参加費:無料
<お申し込みはこちらより>

対談「開かれた写真 fotografia aperta」
2021年8月28日(土)
14:00~
B1階講堂
開催日時:2021年8月28日(土)14:00~
講師:清水穣(写真評論家、同志社大学教授)× 鷹野隆大
定員:先着50名(要事前予約)
参加費:無料
<お申し込みはこちらより>

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【作家コメント】

小説や詩、あるいは映画、演劇のような言語を扱う表現では、人間の苦悩や怒り、悲しみといった感情の動きを扱うのが通例ですが、美術作品においてもこのような人間ドラマを通して鑑賞するということが当たり前に行われています。ときには作品の主題自体がこのようなドラマ性に置かれていることさえあります。
しかし私が自分の制作において求めているのは、このような物語性ではなく、視覚の問題です。私は「見る」という行為にまつわる様々な事柄を、ときに問いかけ、ときに検証しながら制作を続けて来ました。その点から言うなら、私が表現しているのは「人間ドラマ」ではなく、「見る」という行為が引き起こす「視覚のドラマ」と言えるかもしれません。

私はこれまで、性、都市、影など、日常の身近にあるものを見るときに引き起こされる様々なことについて、カメラという視覚装置、あるいは写真という媒体を用いて考察を重ねて来ました。視覚の問題を考えるときに写真ほど適した媒体はないと思います。
私は感情むき出しの劇的な画面を求めていません。そういう特別なカメラの使い方をするのではなく、言わば素人的な、ごく普通の撮り方から生まれる写真を検証することで、撮る、見る、という過程の背後にある意識のありようを探ろうとしてきました。私にとって「毎日写真」とはそのための探求の場であり、実験の場であり続けて来ました(「毎日写真」という枠を自分の制作の中に設定したとき、「ここにおいては撮影の枠を設けない」という枠を設定しました。したがって、ここは何でもありの場となっています)。
それは同時に、カメラという近代に生まれた新しい視覚装置がどのようにこの社会に影響を与えたのかを探る試みでもありました。この点について現在の私が理解しているのは、写真は所有欲の拡張をもたらしたということです。時間と空間という、それまで所有不可能だったものを、不完全ながら所有することを可能にしたのが写真です。その意味で蒸気機関が生産量や行動範囲を大幅に拡張したのと同様に、写真というものも近代の拡張を支えた主要な技術であると私は考えています。

誰もが簡単に写真を撮れるようになった現在、この拡張主義はさらに根深く社会に影響を及ぼしていると思います。見る欲望、そしてそれを所有する欲望。一見、それを欲望しているのは自分であるように見えますが、それは本当に個人に起因するものなのでしょうか。写真画像が蔓延する中で、誰のものとも知れない「欲望の眼差し」をいつの間にか取り込んでいるということが、そこかしこで起きている気がします。このような「見る」という行為における主体性の問題ともこの展覧会の作品は関わっていると考えています。

2021.06.28
鷹野隆大

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【関連プロジェクト】
国立国際美術館にて開催される個展「鷹野隆大 毎日写真1999-2021」に向け、Goliga Editionsではいくつかのプロジェクトを展開中です。
その第一弾として、フォトグラムを使ったTシャツなどを発売中。
詳しくはこちら>>

【写真集刊行】
『KIKUO (RECLINING WOO-MAN) by Ryudai Takano』
限定500部
出版:Libraryman (2021)
編集・デザイン:Tony Cederteg
執筆:Duncan Wooldridge
ご購入はこちらより>>twelve books

【鷹野隆大 インストア】
2021年7月29日[木] - 2021年8月29日[日]
NADiff a/p/a/r/t
(150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 1F)
NADiff a/p/a/r/tの店内に鷹野隆大の大型作品が出現し、新刊作品集や今までの出版物などの関連書籍とともに作家の変遷を辿りつつ、作家の新しい試みの場として「鷹野隆大 インストア」を展開。
詳しくはこちら>>